氷菓あれこれ②:「伝統ある古典部の再生」
さてさて、一話、「伝統ある古典部の再生」
あらすじについては各自見てくださいということで、とりあえず僕が気に留めた視点とそこから得た情報を羅列していこうと思う。
「色」
氷菓を見ていると色というのはやっぱりチラついてくる。この作品には独特の色使いがあるように見えるし、特定の色が特定の意図を持って使われているような感じも多々あるわけで、スルーはできない。
色調と世界観
まずは世界観を形作る基調としての色使い。一話だしこれは触れた方がいいかなと思う。
色使いというのは作品の印象を形作る大きなファクターなのでやっぱり欠かせない。
カラー調整
この画像にカラー調整をかけてみよう。
すると、元の画像より氷菓っぽくなる。
(露出というのは写真の明るさに関わるもので、絞りやシャッター速度とか撮影時に取り込む光の量で変わる)
露出が低い(光が少ない)だけで彩度は高いとか、コントラストで「影」が強調されるとか、セピア調と色温度で「古さ」や懐かしさを醸すとか。無論こういうやり方で描かれている訳ではないだろうけど、こういう色使いであるというだけで、色々テーマに結びつきそうである。
(灰色という割に)作中では色としての灰色が使われることはそこまで多くなくて、こういう色調で灰色感が表現されているようにも思う。
ちなみに同じ調整を白(#FFFFFF)にかけると、日焼けした古紙のような色になる。
この画像は少し露骨だけど、Aパート終わりのアイキャッチがこんな感じですね。なんだか古典っぽい。
光
#FFFFFFというはRGBという色の表し方で白を表す数値なのだけれど、これは名前の通り色を赤緑青の三要素に分けている。
上2桁が赤、中2桁が緑、下2桁が青で、それぞれが1~255のうちどのくらい配分されているかで色を測っているのだ。(FFなのは16進法だから)
RGBは絵の具の足し算ではない光の色の考え方なので、赤緑青すべてを足すと白(光)になって、すべてを引くと黒(暗闇)になるし、すべて真ん中にすると灰色(影)になる。
この「光」の概念であるところのRGBを基準にして考えると、色としての灰色よりも露出によって光量を落とす「影」の色調で灰色が表現されていることには納得がいくし、彩度に絡めると彼らの世界は影がかかっているだけで彩り自体は華やかであるとかそういう解釈もできる。
脱線なのだけれど、元の画像を
- 彩度高め
- コントラスト弱め
- ハイライト少し
- セピア少し
にカラー調整するとヴァイオレット・エヴァーガーデンぽくなったりする。
RGBといえばこういうところにも現れる(多分)。
下の画像は千反田が地学準備室に閉じ込められた謎について話す場面だ。
これらの文字の色で「不確定の状態」を表す灰色を真ん中にした場合、橙と紺碧はRとBの数値が逆方向に動く色なので(これはその通りの色ではないけれど)この色の配置になっているのは芸が細かいなーと思うし、RGBで色を読み解くことの根拠の一つになりうるのではないかとも思う。
千反田の色も気になるところ。寒色を使うことで千反田の論理的な側面を印象付けるとかかな。ただ、入部届けを渡すシーンでもシアン(水色)の効果がかかっているので「寒色」や「理知」といったイメージで固めるのも微妙な感じだ。
こういう風に見ればわかると思うが、色調というのは印象に直結しやすい分、テーマとも密接に関わっていたりする。無意識に雰囲気として掴んでいる情報を細分化することで得られるヒントは案外多いのかもしれない。
色の効果と配置
「虹色」
色と聞いて、何といってもまず一話で印象的なのはここだと思う。
記念すべき第一回目の「わたし気になります」。
色が多い。
虹色といえばいいのか、たくさんの色が散らばっている。
見た感じ、可視光線のスペクトラムではっきりしている色たちを基調にしてるっぽい。
RGBで表すならこう。
レッド・イエロー・グリーン・シアン・ブルー・マゼンタ。
割とこれらの色はアニメの中に散らばっていておそらくそれぞれに意図があるように思う。特には、先述した通り光なんてのがそうで、窓から差し込む光だとかは元ある背景色を明るくすればいいものをわざわざシーンによってこういう色から効果をかけていることが多い。
OPを見るとこれらの色が不断に散りばめられているのだけれど、それはそれで別の記事にできたらと考えている。
「緑と紫」
先ほど氷菓風にカラー調整したFree!の画像だが、更に色合いの調整を入れて緑調とピンク調にしてみたらどうなるか。
この色使いに既視感を覚える人は多いのではないかと思う。
一話の実際のシーンから例を出すとこうなる。
後ほど羅列するが、一話では緑調のシーンが多いように見受けられる。
じゃあこれらの緑調とピンク調が数値としてどういうものかというと、RGBで表すとこう。
(上のgifはカラー調整済みの白に上書きしているものなので少し異なる)
つまり、緑調は緑が優位でピンク長は赤と青が優位。
アバンタイトルの冒頭とAパートの終わりに登場する桜が頭に過ぎります。
では優位どころかぶっちぎるとどうなるかというとこう。
これは緑と紫(マゼンタ)だ。
当たり前だけれど、数値が見事に真逆を指している。
この色は、
ここで見たことがある。
ちょっとカラー見本が明るすぎるけれど、上記のカラー調整をかけるとちょうど良い感じになる。
*2
紫とピンクの違いは「緑」の要素が薄いか濃いかで、境界が曖昧だ。随所に桜が登場することも考慮すると、これは気に留めるべきポイントかもしれない。
里志の瞳の色は、摩耶花が出てくる二話以降で。
折木奉太郎と千反田えるの髪の色も近い色調の印象があるけれど、データとしての確信がないのでこれは頭の隅に置く程度にしたい。
ともあれ「白黒灰」というよりは「明暗」のような光から色を細分化していく考え方や、それに準ずる緑と紫の色が物語の中で対比的な象徴として扱われるというのはここら辺からプンプンにおってくる。
OPには光と影の効果も多いし、なんなら歌詞に「光も影もまだ遠くて」とか入ってることも関連しているのではないかと思う。
では、この緑とピンクの効果がかかるのはどういうシーンなのか。
これらは一話のAパートに登場するシーンだ。
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
1, 2, 3, 5, 6, 7 が効果のかかっているカットだ。シーンの順番通りに並べている。
窓からの光が緑調の効果で描かれているけれど、光を浴びる対象は千反田だったり奉太郎だったりあやふやだ。なら緑調の効果がかかるカットの共通点は何かというと、千反田が奉太郎を見ていることではないかと思う。1と3は互いを見ているわけだけれど、4のカットでは効果がかかっていない。
対して6は千反田の顔が近づくシーンで、奉太郎にとっての印象的な場面だと言える。ここでは奉太郎が千反田を見ていると言える。
では、4と6の違いは何か。よく見ると4のカットの中央下にも桜が描かれていることがわかるが、光の効果として色が強調されるには至っていない(奉太郎の顎のあたりにうっすら?)。なら、これらの効果は「見ている」というよりは「意識している」ときに表れていると推察するのが適当なのではないだろうか。
では意識されているものの実態は何なのか。
これはネタバレになるけれど、二話以降や一話のBパートでは、キャラクターの目を通さないシーンでも色の効果が現れたりする。奉太郎が廊下を歩いているだけのシーンで木漏れ日が緑であったり、とかなのだけれど、だとしても一話のAパートという印象を大きく左右するシーンで連続的に示されたことは大きなヒントになるのではないだろうか。僕自身も観察的な視点で氷菓を全話見直したわけではないので、他の四色との関わり合いもあるだろうから緑と紫の対比だけで考えると危なそうでもあるし、これから二話三話と書き進めながら考えて行こうと思う。
ともあれ、とあるサイトでは緑と紫の抽象的イメージにこうある。
*5
とりあえず僕は、腕組んで訳知り顔で「なるほどー」ってやったのだけれど、全てとまではいかなくとも、奉太郎と千反田に当てはまるイメージは多いのではないだろうか。 神秘的というイメージは何となくしっくり来るけど、そういえば千反田の神秘的なイメージはどこから来るのだろうか。上品や高貴というのは深窓の令嬢であるという辺りだと思うけど、神秘的というとその他にもある気がする。追々、考えて行こう。
さて、ほぼAパートのみで一記事使ってしまった。しかも色だけで。
一話だから仕方ないかなー。
ということで、次の記事はBパートになるか、Aパートの他の要素になるか、未定です。
できる限り善処する可能性を前向きに検討する方針で考慮する感じで頑張りたいと思います。